183シニアファッション研究所
対談「次世代に伝えられること」
「ボロボロになるまでおしゃれに素敵に生きよう。それが、次世代に伝えられること。」

これまで子育てを柱に、教育、まちづくりなどのさまざまな事業を展開してきたトランタン新聞社が、新たに「シニアファッション事業」を立ち上げる。

本格的な少子・高齢化社会に入り、団塊シニア向けにさまざなサービスや商品があふれる中、企業をリタイアして地域に戻ってくるシニアたちに、「お疲れ様!」。そして、「これから生きるステージでいきいき輝こう!」と提案。地域に素敵なシニアがあふれることは、そのまま最高の次世代育成と伝えることがこの事業の趣旨。

この事業は、岩佐俊一氏との出会いに端を発する。「とにかくシニアを元気にしたい。自分も元気になりたい。ファッションという切り口だったら、ぼくに任せて」と言うのは、毎号「お洒落」の連載でおなじみの岩佐氏。

残りの人生は、社会のため、子どもたちのためにできることをというトランタンのコンセプトと重なった。単にファッションというジャンルにとどまらず、新しい時代に向けた、「人間力」と「地域力」を意識したビジネスだ。

今後は具体的に『183ファッション研究所』としてさまざまなシニアの生き方を、机上ではなく、地域から発信していくために、さまざまな活動やセミナーやコミュニティビジネスなどを提案していく。「リブライフ」(生きる)と「シニアファッション」のコラボで生まれた『リブライフファッション』という新語で、さまざまなサービスや商品、事業を展開していく予定。

「ハイカイサロンで社会がわかる」

岩佐 初めて藤本さんとお会いしたのは、藤本さんの講演会でしたね。「なんて元気な人なんだろう。この人ともう一度話をしてみたいな」と、その日の日記手帳にちゃんと書いているんですよ。

藤本 本当は「キツイおばさんでした」と、書いていたんでしょ。あのときはシニア向けの講演会でしたけど、「背広を脱いだら何もできない、勇気のないおじさんたち」なんて暴言を吐いていましたからね。

岩佐 そのキツイおばさん、いえ、藤本さんと新規事業を立ち上げることになるなんて、不思議な縁ですね。その縁をつないでくださったのが、リブライフの読者でもあるNPOサングリーンの竹中義行さん。あの方がいたから私は横浜に来て、あの恐ろしい講演会?に参加し、藤本さんと出会ってしまった。

藤本 人の縁って、本当にわからないですね。

岩佐 しかし、藤本さんといえば、やはり「お母さん」とか「子育て」というテーマしか関心がないと、誰もが思っていますからね。これは、トランタンにとっても一大事ではないですか。

藤本 私のテーマは、たぶん死ぬまで変わらないでしょう。今回、岩佐さんと立ち上げる事業に関しては、私なりの企みもあります。私がシニアの仲間入りをしたからだと思う人もいるかもしれませんが、実は、私の永遠のテーマでもある「子育て」や「お母さん」のテーマをより深く追求するためにも、シニア世代に関わっていただきたいことが山ほどあるのです。

岩佐 なるほど。ちゃんーと戦略があるのですね。もしかして、私はその戦略に利用されるということでしょうか? 利用されて捨てられる可能性もある?

藤本 それは、いいことです。子どもたちやお母さんたちのためにボロボロになって生き倒れるなんて、最高にかっこいい生き方だと思いますよ。そんな生き方ができたら本望じゃないですか。

岩佐 もうぼくは今でもボロボロですよ(笑)。

藤本 いえいえ、これからが岩佐さんの人間としての出番です。私もトランタンを17年間もやってきましたが、まだ本当の意味で何もできていません。とても恥ずかしいですよ。やっと大切なことが見えてきたと同時に、ますます自分の限界を感じます。

対談写真その1

岩佐 今日まで、実にいろいろなことに挑戦し続けてきた藤本さんがそんなことを言うなんて。

藤本 どれも自己満足の活動に過ぎません。それに気づいたらもう恥ずかしくてたまらない。だからこそ、今のままではまだ満足できない自分がいます。でも、これからやろうとすることは、私ひとりの力ではどうすることもできない。やっぱり仲間が必要なんです。それも本気の仲間が。

岩佐 本気の仲間…。それは、私にも言えます。これまで地域活動やシニアのボランティア活動に参加して、私もどこか空しさというか、自分ができることって、これくらいなのかな?と悩んでいました。

藤本 私がシニアファッション事業に興味を持ったのは、岩佐さんが考えるシニアファッションが面白いと思ったからです。

岩佐 それを感じてくださってうれしいです。とにかく、ぼくはシニアの皆さんに元気になってもらいたい。そのきっかけにファッションがお役に立てれば。それなら、ぼくにもやれることがあるかもしれない、と。この歳になって、自分にできることがあるというのは本当にうれしいことで、生きていることを実感できるんです。

藤本 市民活動の話はお聞きしましたが、その前はどんなお仕事をされていたんですか。

岩佐 30代前半に父から受け継いだ学生服や作業服を中心に扱う洋品店を、自分の夢だった高級専門店に改革。80年から90年代にかけて順調に成長を続けました。当時はインポートブティックやゴルフウェアなどを扱うスポーツカジュアル専門店、ワイシャツ・ブラウス専門店、ギフト専門店のナイトブティックなど、さまざまな店舗を経営していました。わずか10万人の小都市ですが、全盛期には、有名ブランドのゴルフウェアで全国一売り上げていた時期もあったんですよ。

藤本 なのにどうして今、市民活動をやっているのですか。欲を出して失敗したのですね。

岩佐 きついな、ダイレクトに言われると。おっしゃる道りですが。小さな商圏から規模を拡大し、当時まだ日本では存在が少なかったアウトレット事業に関心を持ったんです。計画の甘さが原因で道半ばで挫折しました。

藤本 事業規模が大きいことが影響したんですね。トランタンではあり得ないことです(笑)。でも、その挫折が今の岩佐さんをつくったわけで、やっと人として何をしたいかということに辿り着いたのではないですか。

岩佐 確かにそうですね。大した経験ではありませんが、お客様に喜んでいただく醍醐味を何十年も味わっているぼくとしては、商売人の血が騒ぐというか。ぼくの商売の原点は「相手を思う」こと。事業に失敗し、たくさんの方にご迷惑をおかけしたので、もう二度とこの業界ではやれないと思っていました。だから、昔とは違ったやり方でまたファッションの仕事ができるなんて、夢のようです。

藤本 つまり、岩佐さんの「懺悔ビジネス」ということですね。

岩佐 そう、まさに藤本語録にある「懺悔ビジネス」かもしれません。少しでも社会のために役立つ仕事をしたい。ここ数年、さまざまな地域活動に参加させていただき、地域が今抱えている問題を知り、それを解決するために、ぼくがやってきた経験が少しはお役に立てるかもしれない。でも残念ながら勇気がなく尻込みしていた私は、藤本さんに「勇気を出して!」と蹴飛ばされたんです。正直、それまでは、もう自分の人生は終わったものと思っていたんです。

藤本 挫折もあったからこそ、見えてくるものがあります。人生は最後まで、何がよかったかわかりません。むしろ、その挫折が今の岩佐さんにつながった。そうでなかったら今頃、事業に成功して羽振りをきかせているただのおやじ(失礼)だったかも!?

岩佐 そうですね。神様から「調子に乗るな!」ってね。心から懺悔します!かつてがむしゃらにやっていた仕事に、もう一度自分が関わるなんて考えてもいなかっただけに、最初は戸惑いもありましたが、藤本さんに蹴飛ばされて我に返ったというか。やっと、本来の自分を取り戻せるような気がしています。

藤本 蹴飛ばされたと何度も言いますが、私は、岩佐さんの背中をポンと押しただけですよ。岩佐さんが自分でダイブしたんですよ。

岩佐 断崖からね。団塊シニアではなく、断崖シニアですね(笑)。

藤本 なるほど。シニアの皆さんは企業をリタイアして、まさに断崖に立っている。いえ、そんなシニアはなかなかいません。大概の人が「退職したから、妻とゆっくり温泉に行く」とか「ボランティア活動でもやるか」と。そういう話を聞くと、心の中で、「まだやるべきことあるでしょ!」と思ってしまうのです。

岩佐 耳が痛いな。でも確かに大概のシニアはリタイア後、自分の居場所をなくすわけです。組織の中では輝けても、地域で輝く術を知らない。もったいないですね。60歳なんて、まだまだこれからです。

藤本 そう。私が言いたいのは、退職してからが、本当の人生の始まりです。だって、まだ残り10万時間もあるのだからこそ、社会のためにやれる仕事をしてほしいんです。シニアの力って、本当にすごいんですから。

岩佐 シニアたちがまず一歩を踏み出すために、私は「おしゃれ」という、今まであまり関心を持たれなかった分野で、いろいろな提案をしたいんです。

「おしゃれがその人の生き方を素敵にする」

藤本 昨年、トランタンが制作を担当している『ヴィサン』(かながわ健康財団発行)の特集企画で、岩佐さんに「シニアファッション」を担当していただいたとき、本当に感動しました。岩佐さんがコーディネートすると、皆さん一瞬にして輝きだした。魔法のようです。

岩佐 ぼくは皆さんの持っている素晴らしいところを、ちょっとだけファッションというキーワードでお手伝いしただけです。素敵な皆さんをさらに素敵にすること。それがぼくのできることです。

藤本 今までシニアのファッションなど、ほとんど気にしていなかったので、見ていて本当に驚きました。おしゃれということでは、むしろ男性のほうがいろいろな楽しみ方があるのかなと。団塊シニアたちには、朗報ですね。

岩佐 今、マスコミでも団塊シニアの問題がクローズアップされていますが、背広という制服?を脱いだ方々が地域に戻られたとき、何をするのか。具体的にどんなところへ行き、どんな服を着ればいいのかわからないという方へ、楽しい提案をしたいのです。

藤本 迷子の人で地域はあふれるのでは…。

岩佐 「濡れ落ち葉」「わしも族」なんて言葉もありますが、これはかなり深刻な問題です。ですからそんな方たちに、まずは自分自身に関心を持っていただきたい。そこからアクションが始まります。

藤本 つまり「おしゃれ」プラス、生き方提案ですね。

岩佐  「リブライフ」(わが人生を生きる)ですよ。私は地域のシニアの皆さんに「リブライフファッション」を提案したいのです。シニアだからこそ、リブライフしようと投げかけていきたい。

藤本 そんなシニアの生き方を見せることが、真の次世代育成につながるのです。だから、トランタンがこの事業をやる意味があるということです。

岩佐 すごく責任のある仕事ですね。素敵なシニアになっていただくのは、未来の子どもたちのためになるというですね。

藤本  「研究所」という看板でスタートしますが、とにかく楽しい企画をバンバンやりましょうね。

岩佐 シニアの皆さんに元気になってもらえたら、そこからさまざまな仕事が生まれる。シニアファッション研究所では、人と人、人と企業、企業と企業のマッチングから、今までにない新しい価値を創造していきたいと思っています。どんな事業をするかではなく、どれだけ多くの人に喜んでいただけるか、それは、私の仕事に対する原点でもあります。と同時に、シニアでもあるひとりの自分が、これから社会に何を伝えられるか。ある意味、自分への挑戦でもあります。

「子どもたちの未来のために正義の味方 おしゃれなシニアレンジャーになりたい」

藤本  私もここ数年、価値観が随分変わりました。今は会社を大きくしたいなどという気持ちは全くなく、むしろこれから自分たちが社会のために何ができるか、そう思っている人たちと新しい事業に取り組んでいきたい。トランタンに必要な人材は「やる気」「元気」「本気」。ある意味「5レンジャー」のように、それぞれの役割を本気でやれる人とスクラムを組んでいきたいのです。

岩佐 ぼくは「シニアレンジャー」ですね。

対談写真その2

藤本  年齢は関係ありません。どれだけ自分の夢や野心を持っているか。それが、少しでも子どもたちや未来のためにつながるか。仲間同士、それぞれ刺激し合って仕事をしたいですね。でも、これは本気の仕事ですから、自己満足や中途半端な活動で終わらせませんよ、大丈夫ですか。

岩佐 そのつもりです。いい仲間をどんどん増やしていきましょう。

藤本  最後に、今、すでに岩佐プロジェクトで始まっている「ハイカイサロン」について、リブライフ読者にぜひご提案を。

岩佐 はい。私は毎日、百貨店や専門店を徘徊しています。最初はひとりで徘徊していたのですが、最近いろいろな人たちから「一緒に徘徊したい」と声をかけられ、いつの間にかデパートがたまり場サロンになってしまったのです。デパートはバリアフリーだし、シニアにとっては最高の「遊び場」です。勝手にデパートをサロンの場所にしています。そのついでに、洋服のアドバイスをしたり、買物に同行したり、まるで「おしゃれの便利屋」ですよ。でも、ひとりで徘徊するより楽しいし、私が選んだ服をみんなは満足して買って帰ります。

藤本  百貨店がシニアのたまり場? 最近は百貨店もあまり元気がないので、百貨店にも提案ができますね。確かに岩佐さんにすすめられると、つい買いたくなってしまう。「庶民のコンシェルジュ」みたいなものですね。

岩佐 百貨店だけでなく、地域のアドバイザーもしているので、個人的な悩みから事業の立ち上げや地域活動に関する相談まで、何でもOKです。

藤本  地域にID(自分の居場所)を見つけたい皆さんに、「地域でおしゃれに暮らす方法=新しいライフスタイル」を提案する。これは絶対に必要なことですね。

岩佐 おしゃれの相談なら、ど~んとお任せを。ただ徘徊しているわけではありません。楽しい場には、ビジネスチャンスもいっぱいです。定年が終わりではなく、「生涯現役」で稼いでいく。これこそ元気の秘訣です。

藤本  ハイカイサロンいいですね。ぜひ楽しんでください。将来は「ファッションの都・パリ徘徊ツアー」もいいな。

岩佐 そんなのすぐにできますよ。ぜひ、やりましょう。

藤本  では、お互いボロボロになるまでがんばりましょう。

 
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